[ S P E C I A L C O N T E N T S ]
Dry COBALT
DRY環境で使われるブラントカット、スライド&ストロークカットを全てこの一丁で。
コバルトシザーズ総合メーカーKIKU OKAWAの、NewスタンダードにしてTopスタンダード。
Report 3 ハサミの淘汰と変革
それでは使い物にならない
毛髪をしっとりと濡らせたウェットカットに対し、乾燥した硬い毛髪を切っていくドライカット。
さらにドライカットの中でも、毛束上で刃を滑らせて削ぎ切りをするスライド&ストロークカット。
ハサミにとっては刃に紙ヤスリをかけられているような状態となり、同じ刃物を商売道具とする板前さんや料理人からみれば「信じられない」となる。
しかし、こういった技法は一過性の流行に終わるものではなく、現在では一つのカットスタイル/技法/テクニックとして幅広く認められ確立している。
Wet to Dry、つまりハサミの使い方が劇的にはっきりと変わった瞬間であった。
メーカー/熟練製造職人にとってみれば、それまでの “ウェットカットありき”と同じような貧弱なハサミ構造/造りのままでは、このDRY時代のスタイルに追従できない。「それでは使い物にならない」、そう宣告された瞬間でもあったのだ。
「濡らした新聞紙をスパッと切れる」。
これは、自分自身で検品できる切れ味チェックとして、20~30年前に言われていた方法である。
それが「ティッシュペーパー1枚を切れる」へ変化し、最も最近では「濡らしたティッシュ1枚が切れる」という具合に変化していった。
こういった実演販売にて、セールスマンにハサミを勧められ購入経験のある技術者も少なくないだろう。
実はこういったチェック方法は、現場のセールスマンが購入者を説得するために製造側に求めた切れ味であって、現場で通用する切れ味とは全くかけ離れた切れ味であることを語れる者は少ない。
客観的考察として、ドライ環境でカットしていく髪の毛は細いワイヤー程の硬さをもっており、新聞紙やティッシュペーパーを切れる程度の貧弱な刃では、最初は良く切れても永くは使えない、永切れしない。
これらの方法は、プロの道具として探究されてきた本物の品質ではなく、
「現場でセールスマンがたくさんハサミを売りやすいように販売側が製造側に求めた虚像の切れ味」なのであり、刃物としては最も簡単な造りであることがわかるだろう。
もしあなたが新聞紙やティッシュを切れるハサミで満足していたいのであれば、話は別である。
本物品質ではなく、その場しのぎの販売口実でしかないことは、上記のように時代が移り変わるとその口実も変わっていくことからご理解いただけるだろう。
本物は時代が変われど、残るのである。
ベテラン技術者は想い返して頂きたい、昔は知名度の高く名の知れたシザーメーカーの現在はいかがだろうか。
卓越した技術を持ちながらも、時代という流動体に飲み込まれていった同業他社は決して少なくない、誠に残念なことだ。
しかしながらこのドライカット時代の幕開けにより、劇的にカット時間が短縮され、カット時・後のヘアスタイルセット再現性が向上したことは広く認められるところだろう。
こういった革新により、毛髪カラーや質感調整等に十分な時間を費やす余裕が生まれ、プロ用から家庭用まで多種多様な薬液ラインナップが世に出始めたのだ。
いづれにせよ、薬液を帯びた毛髪はあっという間にステンレス材ハサミを酸化・腐蝕させ、鉄屑へと導いた。
“一盛三万!”、まるで八百屋さんのザルに盛られた野菜の様に、輪ゴムでグルッと一巻十丁で使い捨ての粗雑なハサミが販売されていた時期もあった。
こういった“一時モノ”から“一生モノ”へ改められた価値観は理美容鋏に限定されるものではなく、また国や地域に限定されるものでもない。
成熟段階にある文明社会が辿る一つのプロセスとして、本当に良い物を手入れをしながら末永く大事に使う気持ちは、時空を超えてきた。
特に島国日本では、鎖国以前からこういった価値観は先祖代々受け継がれ、だからこそ世界でも稀有な職人技/仕事というものが脈々と受け継がれてこれたのだ。
地球規模の環境変化 より複雑で不安定な世界経済情勢 そうした時代
COBALT SCISSORSが6万円、つい最近まで そういう時代もあった。
今やステンレス材のハサミに15万円!16万円!という値札が付けられている現在、我々が商売に無頓着だと揶揄されていることも承知の上である。
ところが、南アフリカや中国を原産とするこの希少金属(レアメタル)は、限りある資源であるがゆえの埋蔵量の問題に加え、あらゆるハイテク電子産業へ流出しているという背景がある。
さらには、貿易国間の政治的情勢不和も価格高騰の要因になっていると言われている。
2014年実績では直近数年でコバルト原材料は3~4倍へ高騰しているが、これもまた時代なのだろうか。
COBALTに何を求めるか コバルトシザーズ総合メーカーとしての責務
ステンレス材はどんなに高価なものであっても、錆びる。
セラミック材は瀬戸物・焼き物であるから、落下した衝撃で折れたり割れれば使い物にならない。
だからこそ圧倒的な耐酸性、耐蝕性、耐摩耗性、強度・じん性は、理美容技術者がプロの道具に求める絶対的条件なのだ。
時代はコバルト材の特性を求めている。
コバルシザーの抜群に優れた特性を 市場に供給し続けきたコバルトシザーズ総合メーカーとして、
COBALT SCISSORSを今後も造り続け、
よりDRY環境での使用に特化、進化したCOBALTを超えるCOBALT、Dry COBALTを開発するに至った経緯は、必然であり宿命であったのだ。
そして、そうして新たに開発された新素材Dry COBALTを、技術者にとってより求めやすいかたちで供給できるよう最善を尽くすことが、
KIKU OKAWAの企業使命なのである。